KS式電気炉

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方法の概要

1.方法の概要

下図にありますように投入されたダライ粉(鋳鉄の切削粉)は黒鉛電極の周りに集積されたカーボンリッチな還元性雰囲気の中でアークプラズマによって急速に高温溶解されます。
この際、アークによる衝撃で溶滴は微細化されるため反応の界面積が増大し反応(脱酸、脱硫)が促進されます。
この溶解過程において溶湯中の酸化物(主にSiO2)は図中にあるような還元反応によって脱酸され酸素含有量は15ppm以下に低減されます。
その後、電極下の強塩基性スラグ層を通過する際に図中のような反応によって脱硫が進み硫黄含有量は0.003%以下に低減されます。
以上のKS式法の基本をまとめますと下記のようになります。
これら一連の工程(材料投入から出湯まで)は自動化されています。
出湯は連続出湯方式で出湯量は500kg~3t/hrまで製作可能です。

技術効果

2.技術効果

(1)内部欠陥の減少
シリコン酸化物、マンガン硫化物等の金属化合物を除去し清浄度の高い溶湯を得ることができるため内部欠陥が出難くなり、押湯の使用量を低減できます。また、炉前試験により溶湯段階で内部欠陥の発生程度を予測する方法を開発し製品段階での欠陥発生による不具合を予測、低減することが可能になりました。

(2)黒鉛球状化の向上
金属化合物を削除することで少ない球状化剤(残留Mg≒0.015%)で80%以上の球状化率を確保することができます。また、時間経過による球状化率の低下(フェーディング現象)も少なく、安定した品質を保てます。

(3)質量効果
フェーディング現象が少なく、製品内部まで組織、硬度のばらつきが少ない特徴があります。

(4)薄肉軽量化
清浄度が上がることで湯流れが良くなり、湯冷めが遅くなります。これに適切な接種を行うことで薄肉化が可能です。

(5)厚肉化
清浄度の高い溶湯は球状化が安定しており、時間経過による球状化率の低下(フェーディング現象)が少ないので肉厚の厚い部分でも球状化が安定しており、内部欠陥も少ないので厚肉製品の内部まで品質が安定しています。
 下図のデータは肉厚200㎜の角材の中心部から切り出した試験片でのテスト結果ですが、(抗張力約450Mpa、伸び約14%)、(抗張力約550 Mpa、伸び約12%)と高い強度と伸びが確保できています。

(6)耐熱性の向上
精錬効果により添加した耐熱性向上元素(Si、Cr,Ni等)が化合物を生成しないので鋳造性を阻害することが少なく、耐熱性の高い鋳鉄が製造できます。
また、耐熱疲労性は硫黄含有量の低減によって格段に向上します。下図にその一例を示します。

(7)切削性が良好
組織中に酸化物などの介在物が少ないため切削面が緻密です。また工具の損耗も低減します。

(8)鋳肌が良好
ドロス、ピンホール等が発生しにくいので表面欠陥が少なくなります。
また、清浄度が高く溶湯の表面張力が高いため差込み、焼付きが生じ難く鋳肌がきれいです。

3.経済効果

(1)原材料費の低減
原材料は100%銑ダライ粉を使用しますので原材料費が低減できます。炉内で脱酸、還元しますので酸化ロスはなく材料歩留りは100%です。切削油の付いたダライ粉も使用可能です。

(2)歩留りの向上
内部欠陥が出難いので押湯が低減できます。また、湯流れが良いので湯道も回す必要がなく、断面積も小さくできます。(弊社実績ダクタイル鋳鉄方案歩留り 82%)

(3)仕上げ工数の低減
押湯、堰の数、断面積を低減できるため仕上げ工数を低減できます。

(4)球状化剤の使用量低減
弊社実績 Fe-Si-4%Mg 0.7%使用

4.環境負荷の低減

ダライ粉のリサイクル利用、電力・資材(球状化剤等)の使用量の低減、歩留りの向上、薄肉軽量化、欠陥の低減(不良の低減、加工等のロス低減)により環境負荷の低減に貢献できます。

参考文献

5.参考文献

KS式電気炉溶解技術(PDF)

特殊アーク炉による球状黒鉛鋳鉄の原価低減と引け巣防止について(PDF)
   JACT NEWS No.474(1996.6)

球状黒鉛鋳鉄の引け巣予測方法とアークプラズマ精錬によるその防止方法について(PDF)
   こしき No.20(1997) p22-27

鋳鉄の不純物除去技術の開発とその目的(PDF)
   素形材 Vol56(2015)No.2 p14-18

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